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ARTRAY

アート鑑賞ナビゲーター藤田令伊のブログ形式のメディアです。
展覧会レビュー、アート鑑賞のヒント、アートニュースなどアートに関する
effectiveな情報を発信しています。アート以外についてもときどき書きます。
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大川美術館
美術館・ギャラリー
DSCN2590.jpg


群馬県桐生市の里山の一角にある大川美術館。緑豊かな環境に恵まれ、心静かにアートを愉しめるところだ。コレクションは日本の近現代洋画が中心で、海外作家の作品も多い。落ち着いた空間のなかでゆっくりとアートとの親密な時間を過ごすことができる。
 
美術館は上毛電鉄西桐生駅から徒歩8分のところにある。が、この「徒歩8分」がクセモノ。美術館が山の中腹にあるので平坦地の8分ではなく、駅からは山登りになってしまうのだ。長い階段もあったりし、若い人なら問題ないが、シニアにはちょっとキツイ。お年を召した方は車で行かれたほうが無難だ。美術館の前に「水道山公園駐車場」というのがあり、無料で利用できる。詳しいアクセスは美術館のHPで。

http://okawamuseum.jp/


のっけからケチをつけたかたちになってしまったが、しかし、それだけの手間をかけても行く値打ちはある。まず、ここは環境がいい。山の中腹ということで自然が豊かで、じつに爽やか。ちょっとしたネイチャリング感覚が満たされるものがある。天気のいい日はとくに気持ちがいい。


もちろん、環境ばかりではない。肝心の中身も充実している。日本の近代洋画を牽引してきた作家たちの作品がずいぶんそろっている。なかでも、私がとりわけ惹かれたのは、

・牧野義雄 《霧の中のクロムウェル像》
・香月泰男 《十字架》
・三岸節子 《赤い花》
・南城一夫 《赤城山》
・松本竣介 《街》
・松本竣介 《ニコライ堂の横の道》

など。とくに松本竣介の作品が私にはよかった。《街》は深い青を基調にしたわりと大きな作品で、真ん中にひとりの少女が立っている。少女の周り、前景には人々がいて、後景には小さな四角の建物が連なり、どこかの街の様子が描かれている。人々や街並みからはざわざわとした喧騒が聞こえてきそうだ(松本竣介は耳が聴こえなかったが)。

https://www.shimane-catchnavi.jp/event_attachment/image/0000/2353/街_小.jpg


そのなかにあって少女は目的意識を持ってしっかり立っているというよりは、自分の居場所を見つけられずにボンヤリ立っている風情だ。人々や街と同じ場面にいるのだが、それらとはどうしても関係をつなげられないでいるといったふうに私には見えた。絵が描かれた1938年という年代と重ね合わせられるものがありそうな気がする。どちらかというと暗い絵で、明るさとか活発さとかいったものはまったく感じられない。なのに、大変心惹かれるものがあった。松本竣介については「松本竣介記念室」という特別のスペースが設けられている。


ギャラリーは落ち着いた雰囲気で、納得ゆくまで作品と向き合うことができる。案外、そんな環境は少ないから、こういう空間は貴重だと思う。美術館の建物自体もちょっと不思議で、外から見たら平屋に見えるのに、中に入ると5階建てになっていて、意外に懐が深い。コレクションのボリュームも予想よりある。構造がよくわからないため迷宮を歩いているような趣で、ちょっと大げさにいえば、カイヨワのいうところの“めまい”の面白さがある。カフェもあるので、疲れたら美術館の空気のなかで一服することも可能。その時間も心地よい。


DSCN2589.jpg
エントランス


西桐生のはずれという立地は、正直、かなり鄙が入っているが、ここの場合はそれがいいかたちで出ている気がする。地方の小さな美術館のよさがいっぱい詰まったところ、ぜひ来訪をおすすめしたい。なお、年4回ほど展示換えをしているとのことで、↑に挙げた作品が必ず見られるかどうかはわからないので、ホームページでお確かめのうえ、お出かけになるといいと思う。