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ARTRAY

アート鑑賞ナビゲーター藤田令伊のブログ形式のメディアです。
展覧会レビュー、アート鑑賞のヒント、アートニュースなどアートに関する
effectiveな情報を発信しています。アート以外についてもときどき書きます。
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クリーブランド美術館展 名画でたどる日本の美
私的展覧会レビュー
東京国立博物館:2014年1月15日〜2月23日
九州国立博物館:2014年7月8日〜8月31日


会場の東京国立博物館平成館


アメリカにおける日本美術のコレクションといえばボストン美術館が有名だが、オハイオ州のクリーブランド美術館も価値ある品々を多数所蔵している。その数約2000点。第二次世界大戦後、当時の館長シャーマン・リー博士によって精力的に集められた。リー博士による収集は、「近年の欧米の日本美術コレクターのように、単に形や色の構成の視覚的な美しさだけで作品を選択」(展覧会図録)したのではなく、日本文化の価値観や文脈に沿って体系的に行われたという。本展では、そのなかから50点ほどが来日した。

 
展示作品は仏画、やまと絵、絵巻物、屏風絵で、題材は花鳥から人物、山水、物語世界などとなっていた。《厩図屏風》は16世紀室町時代の作品。馬小屋に馬がつながれているさまとともに、馬の前で囲碁や将棋に興じる人々の様子が描かれている。人々の身なりは馬番のそれというより高位の人物たちであることを思わせる。猿や犬までいて、どうして馬小屋にそれらがいるのだろうと不思議に思ったが、作品解説によると猿は厩舎の守り神として飼われていたのだという。ほう。



《厩図屏風》 16世紀 室町時代


馬は一頭一頭、たてがみをきれいに編んでもらいドレスアップされている。手綱(?)も立派だ。大人しくしている馬もいれば、暴れている馬もいる。暴れている馬の前には小さな猿が驚いて逃げようとしているところが描かれており、馬の大きさと迫力がより増して感じられるよう工夫されている。なかなか面白い。こういう絵柄の屏風はあまり見たことがなく、印象に残った。



《薄図屏風》 16世紀 室町時代


《薄図屏風》(16世紀・室町時代)は、まるで現代アートのような描きっぷり。金泥の地に、緑の薄の葉っぱだけが全面にわたって柔らかに描かれる。作者は不明。要素からいえば、きわめて単純なのだけれど、ちゃんと作品と成立している。写実から抽象へいたる途上にあるようにも見える。こんな表現がすでに16世紀に描かれていたという事実に驚かされる。


日本美術にはときどきこういう大胆な抽象で表現した作品がある。応挙の《氷図》なんかが典型で、奇抜な発想と思い切った省略にもかかわらず、飛び切りのセンスで高いクオリティに到達している。一目見るや思わずハッとしてしまうものがあり、現代アートの作家たちも脱帽ものである。



渡辺始興《燕子花図屏風》 18世紀 江戸時代


渡辺始興の《燕子花図屏風》(18世紀・江戸時代)も同様の作品。金地に燕子花の花と葉だけが描かれている。しかも、それらはある高さより上の部分だけが描かれ、下部はまったく描かれていない。一株だけを見れば奇妙な描き方だが、引いて全体を見ると、何も描かれていないにもかかわらず、水面の存在が見事に見えてくる。じつに大胆な描写のしかたである。


《燕子花図屏風》といえば根津美術館の尾形光琳の名作が思い起こされるが、本作もその流れにあるものだそうで、一説では作者の渡辺始興は光琳に師事したともいう。



渡辺崋山《大空武左衛門像》 1827年


ひときわ存在感を放っていたのは渡辺崋山の《大空武左衛門像》(19世紀・江戸時代)。大男の大空武左衛門の肖像画である。この男は実在の人物だったそうで、身長227センチほどあったという。他の絵師たちも描いているが、いたずらに巨身が誇張されがちななかにあって、崋山はほぼ等身大で写実的に描いている。ピンホールカメラを使ってスケッチしたともいわれ、末端肥大症的な傾向もきっちり表現されていて大いにうなずける。「大空武左衛門」という名前も大らかでいい。



山本梅逸《群舞図》 19世紀 江戸時代


山本梅逸の《群舞図》はユーモラスな一作。群舞といっても影絵で表現されている。その一人ひとりのひょうきんなしぐさに思わず笑えてくるものがある。端っこだけ障子が開いていて、女性の踊る姿がちら見できるようになっているのも乙。梅逸は絵のなかに「戯写」と書いている。


同時開催の「人間国宝展」と事実上、二個一の扱いになっているため50点と小粒な展覧会ではあったが、じっくり見るのには逆にそれぐらいのほうがいいかもしれない。見るほどに味わい深い作品も多く、規模のわりには見応えがあった。


★★★★


PS
美術展を見たあとは一服したくなるものだが、東博の近くでは国際子ども図書館のカフェがおすすめ。上野公園界隈のカフェはけっこう値段設定が高めなのだが、ここは割安。しかも穴場的存在なのでゆっくりと過ごすことができる。「子ども」という名称だが誰でも利用することができる。場所はググッてください。



国際子ども図書館


※展覧会レビューについて
展覧会レビューは、筆者である私、藤田令伊の価値観と感性で記しているものです。したがって、「正解」とか「模範解答」を狙ったものでは決してありません。
お読みくださる方には、「世の中にはこういう見方もあるのか」ぐらいに、あくまでも参考としてご覧いただき、筆者の見方に固定されず、おのおのの見方を展開していってもらえればと願います。