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ARTRAY

アート鑑賞ナビゲーター藤田令伊のブログ形式のメディアです。
展覧会レビュー、アート鑑賞のヒント、アートニュースなどアートに関する
effectiveな情報を発信しています。アート以外についてもときどき書きます。
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クインテット−五つ星の作家たち
私的展覧会レビュー
損保ジャパン東郷青児美術館で2014年1月11日〜2月16日までの期間開催。この展覧会は美術館による新進作家支援活動の一環で、今回は児玉靖枝、川田祐子(「祐」は古書体が正当ですがPCでは出ないので新字で表記させてもらいました)、金田実生、森川美紀、浅見貴子の5氏が選ばれた。


いずれも「風景」をテーマに制作している作家とのことで、「5人はレストランでいえば『5つ星』に相当するいま最高峰の画家。選抜には数年の歳月をかけた。自信をもって紹介したい」と担当学芸員から意欲あふれる説明があった。

 

児玉靖枝《深韻−雨三、四、二》


児玉氏は速い筆致(に見えるの)が特徴で、樹木や森、海を題材にしている。2009年までと2010年以降のあいだに作風の変化が見られ、09年までは白もしくは淡い色彩の地を大きく残した上に主題を描いているのに対し、10年以降は画面全体をほとんど塗りつぶしている。《深韻−雨》と名づけられたシリーズはうっそうと茂る森に強い雨が降っており、題名通り、深みのある印象。



川田祐子《SEE AND INK STONE 硯海》


川田氏の作品は日本画の毛描きのようなごく細密なタッチで描かれている。微細な一筆一筆の積み重ねが全体をかたちづくる。絵柄はヒョウの紋様のように抽象的で「構造」を感じさせない。《雲のアルペジオ》とか《仙境》《風はみちびく》といったタイトルがつけられているから、大気のうごめきみたいな「気配」のようなものを表現しようとしているのだろうか。



金田実生《浸透と蒸発》(左)、《近道と雑草》


金田氏はいくぶんメルヘンチックあるいはコミカルな感じのする抽象性の高い画風。ぼんわりとモチーフが描かれる。今回の展覧会は風景をテーマにする画家たちばかりだということだが、ふつうの風景画とは思われない。



森川美紀《Jiufeng》(左)、《Janakpur》


森川氏の作品は白い地をベースに赤や青が鮮やかに描かれる。すっきりとした印象。家らしきものが描かれてはいるが、やはり風景画というふうではなく、どちらかといえば心象画とでもいうような内面が表現されたもののように私には感じられた。



浅見貴子《双松図》


浅見氏は墨を使ったモノクロの作品を描いている。大きな点描で樹木や花などが表現されダイナミックな印象。屏風仕立ての作品もあって異彩を放っていたかと思う。


以上のようにバラエティに富んだ5人の作家を見ることができ、それぞれの作者の情熱も感じ取ることができたのだが、では、本展で強くインスパイアされるものがあったかといえば、正直なところ、必ずしもそうとはいえなかったといわざるをえない。いずれも、もちろん下手ということはないし、一定の水準に達していると思うのだけれど、かといって強烈な何かを感じ取るとまではいかなかった(私は、だが)。


作者ら自身は誰かの真似をしているつもりはないと思うが、類似の表現はこれまでにもあったし、これらの表現が現時点での絵画表現の到達点、最先端と見なすのも難しい。美術館の説明があまりにも自負心に満ちたものだったので、かえってそう感じてしまうのかもしれないが、むしろ既視感のあるコンベンショナルなものに見えてしまった。


また、イチャモンをつけるようで恐縮だが、新進作家の支援活動というわりには、美術館の説明はやたらと「この人は○○展で受賞した」とか「いくつもの美術館で取り上げられている」などと、作家たちの実績を強調したものになっていた点にも違和感を覚えた。実績がそんなにあるのだったらいまさら「新進作家」として取り上げる必要などないじゃないか、という気持ちになってしまう。逆に、誰もまだ取り上げていないけれど私たちは素晴らしいと評価するから取り上げる、ぐらいのスタンスでこそ新進作家の支援活動ということになるのではないだろうか。


ということで、企画側の姿勢も保守的で視野の必ずしも広くないものに感じられた展覧会だった。


★★☆


※展覧会レビューについて
展覧会レビューは、筆者である私、藤田令伊の価値観と感性で記しているものです。したがって、「正解」とか「模範解答」を狙ったものでは決してありません。
お読みくださる方には、「世の中にはこういう見方もあるのか」ぐらいに、あくまでも参考としてご覧いただき、筆者の見方に固定されず、おのおのの見方を展開していってもらえればと願います。