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ARTRAY

アート鑑賞ナビゲーター藤田令伊のブログ形式のメディアです。
展覧会レビュー、アート鑑賞のヒント、アートニュースなどアートに関する
effectiveな情報を発信しています。アート以外についてもときどき書きます。
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未体験ゾーンだったアリス・コンサート
ブログ

新年早々、アリスのコンサートへ行ってきました。とくにアリスの熱狂的なファンというわけではなかったのですが、ふと気が向いてチケットを購入してました。

 

月日というのはえらいもので、谷村新司さんは71歳に、矢沢透さんと堀内孝雄さんは70歳になっていらっしゃるんですね。アリスといえば若者の旗手みたいなイメージがあったので、もうそんなお年なのかとちょっと驚きました。ステージだけではなく観客席のほうも、見たところ、だいたいアリスと同年代の人たちがもっとも多く、私たちは一番若いくらいでした。

 

 

コンサートが始まると、会場のボルテージは一気にヒートアップ! 観客のみなさんもノリノリで、一緒に歌ったり、ペンライトを振ったり、それぞれに生アリスとの時間をお楽しみに。アリスの歌声は、全盛期からほとんど衰えていません。谷村さんの声がかつてより少し高いトーンになったかなと感じましたが(ふつう加齢に伴っては低くなると思うのですが(笑))、堀内さんは昔とまったくといっていいくらい変わりありませんでした。

 

 

MCはもっぱら谷村さんの担当で、ユーモアあふれる話にドッと湧きます。かつての裏話みたいなものも話してくれ、まだ無名だった頃、浜松でのこと。幕が開いたら、ステージ上が3人なのに対して、客席は4人。しかも、歌い始めたら「やかましい」と怒鳴られたとか、四国での仕事では場所が造成したばかりの住宅地で土の地面だったため、矢沢さんが打楽器を叩くと地面に楽器がめり込んでしまい、叩いては引き上げ、叩いては引き上げを繰り返しつつ演奏していた、とか。現在のスーパースター・アリスからは考えられないことばかりなのでした。

 

 

そんな話をしながら、谷村さんは昔を思い出し、ひととき昔に還っておられるのでした(実際、ご自身そう語っておられました)。そして、それはステージだけではなく観客席のほうも同じなのです。観客のみなさんもまた、現在の年齢だけではなく、気持ちはアリスを聴いていた学生時代に戻っていらっしゃるご様子で。私の隣の席のご老人(失礼!)は、体を激しく揺すって「涙の誓い」を熱唱し、目に涙を浮かべつつ「遠くで汽笛を聞きながら」に聞き入っておられました。きっと、心は20代でいらっしゃったことでしょう。

 

 

ふいにあることに気づきました。このアリスのコンサートはじつに不思議な世界になっている、と。ふつう、コンサートは現在進行形のものです。たとえば、AKB48のコンサートが行われているとしたら、それは「いま」という時制の下で行われています。「いま」活躍しているAKBが、「いま」生きている人々に向かって踊り、歌う。AKBのコンサートはすべて「いま」に属しているものです。そのことはAKBに限らず、米津玄師でも福山雅治でも同じことです。あるいは、かつてはアリス自身もそうだったはずです。

 

 

ところが、この日のアリス・コンサートはそうではなく、複数の時制が同時に存在しているのです。現在進行形の「いま」と過去完了形の「かつて」が入り交じり、交錯し、いわく言い難い世界を生み出しているのでした。そのため、最初はステージしか見ていませんでしたが、「複数時制の同時共存」に気づいてからは、私はステージと観客席の両方を見るようになってしまいました。「いま」と「かつて」の両方の時間を身にまとい、歌い続けるアリスとファンたち。これはもはや、通常の「コンサート」という言葉だけでは説明のつかない未知の概念のものであって、私はこれをどう受けとめればいいのかと戸惑いと驚異さえ覚えました。そして、わけがわからないままに大きな感動を覚えたのでした。

 

 

いったい、あれは何だったのだろうと思います。いま、あんなコンサートができるのはほかに誰がいるだろうかと考えました。山下達郎はどうかと思いましたが、どうも達郎さんはAKBと同じように「いま」の人のように思われます。では、サザンオールスターズはどうか。達郎さんよりはアリス寄りですが、アリスほどの「複数時制」にはならないんじゃないかと。デビュー45周年を迎えた甲斐バンドは、かなりアリスに近いものを展開できそうですが、甲斐よしひろさんがかつてとは異なるアイデンティティに変貌してておられるため、やはり「複数時制の同時共存」という感じにはなり切らない気がします。

 

 

と考えていくと、あんな世界を繰り広げられるのは案外アリスだけかもしれないと思われてきます。思いつきで見に行ったコンサートでしたが、大変に貴重な体験となったように思います。ちなみに、ファイナルは2月の大阪城ホールです。