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ARTRAY

アート鑑賞ナビゲーター藤田令伊のブログ形式のメディアです。
展覧会レビュー、アート鑑賞のヒント、アートニュースなどアートに関する
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ギリシア彫刻はなぜ大理石なのか?
ブログ

ミロ03.jpg

 

 

西洋文化の源とされるギリシア。一つの象徴として今日に伝わるものに彫刻がありますね。ミロのヴィーナス像に代表されます。そのギリシア(あるいはローマ)彫刻の材料は大理石ですが、いままで、どうして大理石なのかは考えたことがありませんでした。ところが、先日こんなことがありました。

 

急に私事の話になるのですが、うちの近くにいわゆる温泉センターがあり、我が家のお気に入りになっていて、ときどき訪れています。ご同様の方はお気づきでしょうが、最近、温泉センターでは外国人の来客が増えています。アジア系、欧米系を問わず、一昔前には見られなかった“テルマエ・ロマエ”状態になってきているのです。

 

 

つい先ごろもそうでした。温泉センターの湯舟に気持ちよく浸かりながら、見るともなく周りを見ていたら、一人の欧米人と見える青年が浴場から出ていこうとしていました。「大人」と「子ども」のちょうど真ん中ぐらいの年頃で、「子ども」ほど幼くはないけれど、「大人」になったら失われる瑞々しい青さをまだ残しているといった感じです。眼を引いたのは身体の白さ。透明感があり、濁ったところがまったくなく、それでいて健康を感じさせる見事なほどに美しく白い裸体をしているのです(写真でご紹介できないのが残念です(笑))。

 

 

思わず見惚れて、ついつい彼を眼で追っていくと、なかなか温泉マナーを心得た青年で、出口のところでしっかりタオルで身体を拭い始めました。ところが、余程きれい好きなのか、その拭い方が執拗といってもいいぐらいの念の入れようなのです。一通り身体を拭っても、さらに上体を右へ左へと思い切りひねっては背中のほうを目視確認しようとし、少しでもまだ濡れているところがあったら、再び隈なく拭おうとします。足も足首までごくていねいに拭っていきます。

 

 

その拭い方もじつに繊細で、私なんぞは乱暴にパッパッと拭いて終わりなのですが、彼はゆっくりと、優美といってもいいような振る舞いで自らの身体をやさしく労わるように静かにタオルを当てていきます。自分の身体に対する愛を感じさせるのです。体をひねると、美しく白き筋肉が盛り上がり、動きに合わせて移ろっていきます。そのさまはちょっと官能的なものさえあり、まさに動くギリシア彫刻そのものなのでした。

 

 

大変美しいものを見せてもらったと満悦し(笑)、男色というのはこういうところから生まれるのだろうか、とかボンヤリ思っていて気がついたのが、これこそがギリシア彫刻の理由だったのではないか、ということ。もし、この身体を彫刻で表現しようとすれば、材料は大理石を使えばいい、ではなく、大理石でなければならないのです。これまでギリシアやローマの彫刻の材料が大理石だという事実には、それほど注意を払っていませんでした。それはそういうものであって、特段の疑問も問題意識も抱いてこなかったのです。しかし、こうして「実物」を目の当たりにすると、材料が大理石でなければならない理由がにわかに立ち現れてきます。このどこまでも美しく白き裸体を表現するには、大理石が必須なのだと。

 

 

また、欧米人は、若いころは(この青年のように)惚れ惚れとする身体を持っていても、加齢に伴う変化が激しいという面があるように思います。その程度はわれわれモンゴロイドよりも欧米のコーカソイドのほうが如実であるように見えます。そのため、若い一時期の美しさはほどなく失われてしまうわけです。つまり、かの「美しく白き身体」は、一瞬の幻であり、その姿をいつまでもとどめ置くには彫刻でコピーをつくっておくしかありません。そして、その際には大理石こそがどうしても材料でなければならなかった、ということです。

 

 

いままでそんなことは考えたこともなかったのですが、あの青年の裸身を目の当たりにして、長年気づいていなかった西洋文化のじつは深いところを垣間見たような気がしています。