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ARTRAY

アート鑑賞ナビゲーター藤田令伊のブログ形式のメディアです。
展覧会レビュー、アート鑑賞のヒント、アートニュースなどアートに関する
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文庫 X
ブログ

20161014.jpg

 

「文庫X」が話題になっている。盛岡のさわや書店フェザン店で文庫を担当している長江貴士(33)さんが「この本を一人でも多くの人に読んでもらいたい。そのためにはどうしたらいいのか」と考えて、あえて書名も著者名も隠して売り始めたものだ。いまでは盛岡だけでなく、全国30都道府県200以上の本屋さんで取り扱うようになっているそうで、東京では三省堂書店池袋店でも売っている。池袋は大学からの帰り道なので、先日、立ち寄って810円也で1冊買い求めた。自宅に帰って、いったい正体は何なのだろうとワクワクしながら封を開けてみたところ、かなり意外な本だった。ネタバレしないように書かなくてはならないが、この本についてちょっと述べてみたい。

 

 

まず、正体を知らずに買って損したと感じたかというと、まったくそんなことはない。さすがに3000冊以上の本を読み込んできた書店員の眼は的確で、むしろ、よくぞこれを選んでくれたという気持ちになった。500ページ以上の大著だが、一昨日購入して昨日中に一気に読了してしまった。

 

 

中身を隠すための手づくりのブックカバーには「知らないでは済まされない現実が、この作品では描かれます」とある。まさにその通り。著者はある「出来事」を他の誰よりも追い続け、その追い求めのありさまを本書において縷々語ってゆく。それはきわめて特異な情報ではあるが、それでもこんなことが世の中にまかり通っていたのかと私は心底驚いた。そして、「現実」は過去に終わったことではなく、いまだ現在進行中である。

 

 

20161014_2.jpg

 

 

私の得た感触では、著者が書いていることはほぼすべてが真実であろうと思われる。私はどちらかというと理屈っぽい人間だが、そんな私が読んでも納得できる話なのである。著者の執念ともいうべき取り組みには感嘆するほかないが、同時に本書を読みながら「どうしてそこまでできるのだろう?」という疑問も正直覚えた。著者は自分がそういう「性格」だからと文中で記しているが、それだけで人間こんなことができるのかという戸惑いを禁じ得なかった。

 

 

はたして、著者がそうまでして「出来事」に取り組んできた理由が最後近くになって明かされる。じつは、著者自身も類似の「出来事」に見舞われていたのだ。おそらくは決して他人事として見ることができなかったのであろう著者の心情が読む者に理解されてくる。ブックカバーには「僕らが生きるこの社会の不条理さに、あなたは憤るでしょう」ともある。著者はほとんど自分事として「不条理さ」に憤りを覚え、長江氏に「こんなことができる人間がいるのか」といわしめるほどの行動を取り続け得たのだろう。

 

 

上に書いたように「出来事」はすでに終わった話ではなく、現在進行形のままである。いろいろな事情や制約があるから現在進行形のままなのだろうが、私の意見としては、一日も早く終わりにすべきである。妙な言い方になるが、本書の第二弾、第三弾が発刊されるようでは、この国はまともではない。

 

 

「文庫X」の正体は12月9日に明かされる。それまでに一足早く正体をお知りになることをおすすめしたい。