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ARTRAY

アート鑑賞ナビゲーター藤田令伊のブログ形式のメディアです。
展覧会レビュー、アート鑑賞のヒント、アートニュースなどアートに関する
effectiveな情報を発信しています。アート以外についてもときどき書きます。
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シミュレーショニズム 再び?
アートを考える
現代アートのなかには「シュミレーショニズム」といわれるものがあります。これは1980年代後半に顕著になった現象で、まったく新しいアートをつくるのではなく、既存の作品から素材や表現を盗用・借用して、作者なりの新しい見せ方を生み出そうとしたものです。和歌の本歌取りとちょっと似ています。そのシミュレーショニズム的な動向が最近再び目立つように感じています。

来年封切られる映画のなかでもっとも注目を集めることになると思われるのは『スターウォーズ ザ・フォース・アウェイクン』(2015年12月封切予定)でしょう。6つのエピソードで完結したはずだったスターウォーズがまたしても動き出しているのです。


スターウォーズだけではありません。マット・デイモン主演のジェイソン・ボーンシリーズも『ボーン・アイデンティティ』『ボーン・スプレマシー』『ボーン・アルティメイタム』の3つで終了し、以降はジェレミー・レナが主演した『ボーン・レガシー』シリーズに引き継がれるはずでした。ところが、レナシリーズの新作は後回しにして、またしてもマット・デイモンのほうの新作をつくるといいます。


キーファー・サザーランドの『24』も、もう新シリーズはないはずだったのに、やはり制作されています。日本でも『宇宙戦艦ヤマト2199』や『寄生獣』といった、いまとなっては“大昔”といっても過言ではないコンテンツが息を吹き返し映画化されていますし、2015年に誕生50周年を迎えるガメラにも何らかの動きがあるようです。


こうした動向は文化的なものに限りません。飲食品や衣料品、文房具、AV機器、はてはバイクや自動車などなど、あらゆるジャンルでかつて人気を博した消費記号が再利用され、現代にリボーンしています。最近はこの傾向がとくに著しく、もはや、ネオ・シミュレーショニズム到来といいたくなるほどです。


しかし、いま起こっている現象がかつてのシミュレーショニズムと決定的に違うのは、現在の現象はもっぱら商業的な理由によって湧き上がっているという点です。かつて、シンディ・シャーマンが「どこかで見た女」に扮したり、森村泰昌がモナ・リザになったりしたのは商業的な理由によってではありませんでした。世の中に批判的な問いかけをしたり、創造の秘密に迫ろうとするためでした。それに対して、いまの現象は「手堅いマーケティング」の賜物であって、要するに、ある程度の見込みが確実に立つネタに依存する傾向が強まっているわけです。創造性や批判精神より追随的な打算が大きいといえるでしょう。


いまのシミュレーショニズム的な動向は現代人の創造性やチャレンジング精神の欠乏・枯渇を示唆している可能性があります。モノや技術は別にして、文化力といった面において、私たちは「進歩」しているのでしょうか? シミュレーショニズム的なものの元祖といっていい本歌取りは新古今和歌集以降に隆盛しましたが、平安歌人たちが巧みに過去の作品を取り込みながらも、それまでにない新しい世界を提示したような教養と感性をいまの私たちは持ち合わせているでしょうか? 大いに疑問です。同じように盗用・借用していても、創造性において彼我の差は歴然であるように私には思われます。


何となく、私たちは現代に近ければ近いほど高いレベルにあり、新しいものほど進歩していると思いがちですが(そのように考えるのはモダニズムの影響です)、実際はそうとはまったく限りません。「進歩」しているのではなく、ただ「変化」しているだけなのかもしれません。いまのシミュレーショニズム的動向は、そのことに気づく必要性をひそかに、しかし強く訴えているような気がします。