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ARTRAY

アート鑑賞ナビゲーター藤田令伊のブログ形式のメディアです。
展覧会レビュー、アート鑑賞のヒント、アートニュースなどアートに関する
effectiveな情報を発信しています。アート以外についてもときどき書きます。
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日本アートマネジメント学会全国大会(2014年)・その2
アートを考える
アートマネジメント学会のレポートのつづきです。

今大会は「文化芸術の振興における大学の役割」が基幹テーマとして設定されましたので、いま大学は何をすべきかも焦点になりました。その一つとしてクローズアップされたのが「社会貢献」でした。大学の役割は長らく「教育」と「研究」とされてき、学生たち次世代の人たちを教え育てるとともに専門知識を駆使してさまざまな分野の研究を進めること、それが大学の使命と考えられてきました。近年、それらに加えて、より直接的な「社会貢献」が注目、重視されているのです。


近頃は各地の大学が生涯学習の講座を盛んに開催していて、ポスターや中吊りなどで告知をご覧になった人も多いと思いますが、それらも上記のような「社会貢献」を意識した活動です。また、前回のエントリーで触れたアートプロジェクトも同様の発想が根っこにあります。大学が絡んだアートプロジェクトの増加は、大学の「社会貢献」意識の高まりを示すものとして解釈することができます。


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たとえば、↑の写真はシンポジウムで報告された実践女子大学の事例です(指導・塚原肇教授)。日野市や日野駅周辺の商店街とともに実施された「デザインのれん」というアートプロジェクトで、商店街や各商店に統一感がありながらも個性的なデザインのれんを制作し、ディスプレイすることで街並みを特徴づけるとともに活気づけようと考えられました。


学生たちは自分たちの力でこうしたのれんをつくって街や店を飾るわけですが、口でいうのは簡単ですが実際に行うにはさまざまな課題を乗り越えなければなりません。そもそも企画案を考えて日野市にプレゼンテーションしたり、採用されたプラン(この場合は「デザインのれん」ですが、ほかにも「和装おそうじ隊」や「トンネル美術館」「コンテナショップ」など計6つのプランが実践されました)の推進のためにデザイナーなど外部の人に依頼したり、各店舗や商店街組合と打ち合わせや調整を繰り返したり、実際に飾ってもらうための交渉をしたりなど、幅広い活動が求められます。


プロジェクトを進めていく過程を通して学生たちは企画力やプレゼンテーション力、コミュニケーション力、交渉力といったものの実際を経験し、スキルアップに努めます。そこにはおそらく座学だけでは得られないものがあるはずです。プロジェクトに参加した学生の感想として「1枚ののれんで街が活気づくことを知った」とか「まさに営業活動だった。コミュニケーション能力の重要性を身をもって学んだ」「日野市への関心がぐっと強まった」といった声が紹介されました。こうしたアートプロジェクトは学生たちへの教育活動であると同時に地域活性化への尽力にもなっており、「社会貢献」ということができるわけです。


他方、先日のエントリーのように、こうしたアートプロジェクトといわれるものは、ほんとうに「アート」なのか?という指摘も出ているのです。つまるところ、その活動をどういう視点から見るかという問題のように思います。どこまでも「アート」としてのクオリティを重視するのであれば疑問が抱かれるのでしょうし、そうではなく学生への教育活動だと見れば大きな成果が期待されるものとして評価できるのだろうと考えます。


さて、もう一つクローズアップされたテーマは「持続性」でした。「デザインのれん」のような活動が意義あるものだったとしても一過性で終われば意味合いが半減するし、もったいないことでもあります。そのため、あらゆる事例において共通して「持続性」が重要だという指摘がなされました。私がいろいろな発表を見せてもらっていて感じたのは、持続性を確保するには「しくみ」と「安定した資金」の両方が重要だということでした。どちらかだけではうまく続かないということです。


上記の実践女子大の活動でも、このアートプロジェクトを推進していく母体として「ひのプロ」という組織がつくられ、そこが核となって大学や日野市、商店街と連携、協働していく形態が構築されました。そうしたかたちをつくっておけば、年々学生たちが入れ替わっても、しくみは維持され活動の持続性が担保されます。また、「ひのプロ」という核があることによって活動を具体的なものとして捉えやすくなり、大学にしても市にしても予算をつけやすくなるというメリットがあったと報告されました。「しくみ」づくりは「安定した資金」づくりにも寄与するわけです。


といった実践報告が全国各地から寄せられ、非常に内容のある大会になったと思います。ひるがえって自分は学生たちに何を伝えられているのだろうかという反省的な気持ちにもさせられました。それと同時に、非常勤という立場では実践女子大の事例のような積極的な活動はしたくてもなかなかできない現実があることも痛感せられました。当然のことですが、自分のできる範囲で頑張っていくしかないのです。